FC2ブログ

ミスティ・トワイライト

期間限定パロディ 『もつれた糸をほどくような・・・ 』 新連載!


期間限定パロディ 『もつれた糸をほどくような・・・ 』 第4話


期間限定パロディ 『もつれた糸をほどくような・・・ 』 第4話


第4話

窓から差し込む秋の日射しを今日はひときわ眩しく感じて、速水は不快そうに眉をしかめた。
昨夜は紫織の病状が思わしくないと鷹宮家から連絡がきて、速水は退社後すぐに鷹宮邸に駆けつけ、泊りこんだ。
速水は寝不足で頭の芯が重く感じたが、気を取り直すように深呼吸すると、早くから出社している秘書の水城にコーヒーを頼んだ。
そしてそれが運ばれてくる間に、社長室の奥のクローゼットに向かうと、予備のワイシャツとスーツに着替えた。

しばらくして水城が朝のコーヒーを運んできた。
「ありがとう水城君。今日は外出したいのだがスケジュールは空けられるか?」
温かなコーヒーを一口飲み、速水はほっとしたように息をついた。
その様子を心配そうに見つめ、水城は答えた。
「スケジュールは立て込んでいますが、なんとか空けることはできます。
真澄様、お顔の色がすぐれないようですが、ちゃんとお食事はとっていらっしゃいますか?」
気づかわしげにそういう水城に、速水は無理に笑顔を作って言った。
「ああ。時間がある時にはな。忙しいのは今に始まったことではない。
慣れているから大丈夫だ。」
速水は疲れているようだが、不思議と機嫌は悪くない。
それに勇気を得て、水城は重ねて言った。

「ですが・・・お疲れなのは、お気が休まらないからでございましょう。」
「だとしても、どうしようもないな。自分にできることをするだけだ。」
速水はどこか淡々として、何かを吹っ切ったようにも見える。
「いくら真澄様が慣れていらっしゃるからといって、あまりお気のすすまないことばかりをやっていらっしゃると
本当に倒れてしまいますわ。少しは気分転換になるようなこともなさらないと・・・」
速水は空いたコーヒーカップを水城に返すと、水城の心配を打ち消すようにまっすぐに顔を見て言った。
「そうだな。今日はマヤの様子を見てこようと思う。」
「マヤちゃんの・・・?!」

マヤのことをどうするつもりなのか?―――水城は喉元まで出かかっている質問を飲み込んだ。
速水に訊いたところで、今はまだどうにも身動きのとれない状況なのだろう。
だが、速水がマヤを訪ねてみる気になったのは、何か心境の変化があったからに違いない。
「わかりました。いってらっしゃいませ。
お仕事のスケジュールのことは、なんとか調整いたしますのでどうぞお気になさらずに。」
水城は速水とマヤの気持ちがうまく通じ合うようにと、心の中で祈らずにはいられなかった。

主演女優の調子も戻り、相手役との息もピッタリで、稽古は実に順調に上手くいっている―――黒沼はなんとも不思議な気持ちで稽古に励む主役の二人を見ていた。

数日前、水城に連れられて戻って来たマヤは、その目を赤く泣きはらしていた。
聞けば大都芸能を訪ねていたと言う。
黒沼も役者たちから、速水が結婚話がすすんでいるという噂を聞いており、速水とマヤの間に何かあるにちがいないと気づいてからは、その噂に対するマヤの反応が気がかりだった。
案の定、大都芸能から泣きながら帰ってきたマヤを見て、黒沼は自分の勘が正しかったのだと確信し、傷ついていることを隠そうともしない主演女優のことを心配していた。
ところが意外な事に、マヤは最初こそ落ち込み稽古に身が入らない様子だったが、すぐに気持ちを切り変えたようで回復し、稽古に集中し始めた。
不思議な事にその頃から、怪我をして以来、マヤと仲たがいしていたかのように見えた相手役の桜小路が、マヤを庇い優しく接するようになった。
そのことが、さらに二人の息がピッタリと合わさるように働きかけ、主役の二人はまるで本物の恋人同士のような一体感を醸し出していた。
 
(稽古がうまくいっていることには文句はないが、あいつらの私生活はどうなっているんだろう?
いや、そんなもの全部芸の肥やしだ。
多くの感情を経験してこそ、芸が磨かれる。)
黒沼は余計なことは考えまいと自分に言い聞かせ、演技に熱が入る主役に二人を見守った。
               (続く)


web拍手
*Edit TB(0) | CO(1)

~ Comment ~

NoTitle 

このもつれ、どうにかしてあげてくださいませ~
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop